「起業」の時代はある意味で「楽」だった。 全ては自分の責任だった。毎年、目の届く範囲で、売り上げと利益を上げていればよかった。 自分の「ミッション」に沿った事業で、毎年160%の成長と約10%の利益率を確保できていた。 結果がダイレクトに見えることも楽しかった。 また「大きな意思決定の連続」であることも、楽しかった。 ミッションを定め、事業の中核を定め、マーケティング施策の柱を決め、(満足度と利益率が最大となる)現場のオペレーションを模索し、NPOと株式の二法人体制に変えて・・・ どれも毎晩うなされるようにして悩んだことだったけれども、毎日新しいことにチャレンジしていて楽しかった。 *****...
...「私はダニエル・ブレイク」を観て、福祉と効率について考えた
「私はダニエル・ブレイク」を観た。昨年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した作品。 監督であるケン・ローチは、社会の流れに翻弄される弱者の側に立った作品を描くが、「私はダニエル・ブレイク」にも「どんな人間も名前を持つ一人の人間だ」という強いメッセージを感じた。 本作は、医者からは就労を禁止されている心臓病持ちの老人が、(イギリス版の)ハローワークで、「就労可能」と認定されてしまうことから物語は始まる。 「就労可能」と認定されたからには、「求職活動」を行わなければ失業給付金がもらえない。だから、老人は街の工場を歩き回って履歴書を配り歩く。 けれども、医者からは就労を止められているから、実際は働く...
...読書メモ:「ルポ 児童相談所」
著者の慎泰俊さんから献本頂いたため、遅ればせながら読書メモを書いた。 ルポ 児童相談所: 一時保護所から考える子ども支援 (ちくま新書1233) ****** 恥ずかしながら「一時保護所」についてあまり知らなかったので、とても勉強になった。一時保護所とは、「実家庭で暮らすことが最善ではない」と児童相談所に判断された子どもたちが、平均1ヶ月滞在する場所のこと。(その後、実家庭に戻れない場合、社会的養護や特別養子縁組を受けて、実親を離れ生活することになる。) 本書は、一時保護所の厳しい規律や、そこに滞在する子どもたちの精神的な不安定さについて、ルポ形式で描かれている。また、一時保護所にも「良い...
...残業とは経営陣の責任である
経団連が、残業規制に反対していた一連の出来事を見て、とても驚いた。 「残業なしで勝負できるビジネスモデルを創れません」と自ら言っているのと同じだからだ。 そもそもイケてるビジネスモデルがあれば、残業なんて必要ない。 「残業しなければ成り立たない」ビジネスモデルしか考えつかなかった時点で、経営陣としては能力不足だと言える。 例えば、営業系会社で働くある友人は、「夜にクライアントから問い合わせがあったらその場で対応しないと、クライアントは逃げてしまう。だから残業するんだ。」と言っていた。 しかし、競合他社がひしめく業界で勝負していて、競合と同じような価値しかクライアントに提供できないのであれば、残...
...不登校・中退と大学受験
今年も合格発表の時期が来た。 色々な生徒の合格報告が届く。会社が大きくなって僕と現場との距離はだいぶ離れてしまったけれども、それでも「キズキがなければ、引きこもりのままだった」という声を聞くたびに、明日も頑張ろうと思える。 ****** けれども、「〇〇大学に受かった」ということ自体は、社会全体にとってはプラスの意味もマイナスの意味もないと僕は思っている。 例えば、「慶應大学に受かった」というのは、塾の実績としては良いことかもしれない。 けれども社会全体で見れば、「A君が慶應大学に合格した分、B君は慶應大学に不合格になった」ということになる。 大学の合格者の枠が限られている以上、大学受験とは「...
...競合の登場と社会的意義
年明けから、弊社の社員向けに週報を書くことにした。 塾の校舎が代々木と秋葉原、行政から委託を受けている事業所が東新宿、中退予防のお手伝いをさせて頂いている専門学校・大学が全国にある中で、どうしても僕自身が現場と離れてしまっているからだ。 週報は毎週の経営課題の話が中心にしてるのだけれども、その中で僕個人の日々の雑感も書くことにしたので、ブログにもアップしておこうと思う。 ****** 安田です。みなさん、年末年始はいかがお過ごしでしたか? 33歳独身の年末年始は、友人たちと沖縄に行ったり大阪で天皇杯決勝を見に行ったりしていました。 そんな僕のプライベートの今年の目標は結婚です。 さて、今日の話...
...経営者として考える残業、2017年の誓い
おっさんたちが「残業」を好む理由の一つは、「自分もそうやって仕事をしてきた」からだと思う。 「自分は長時間働くことで、仕事の能力をつけてきた」と思っているからこそ、他者にもそれを押し付けてしまう。 僕自身も起業してから2年ぐらいは、1日15時間働き、休みもなかった。だから「全社員、長時間必死で働くべきだ」と心のどこかで思っていた。 僕に限らず起業家の多くは「寝ずに働いたことで、今の自分がある」と思うだろうし、外資金融コンサルの多くも「バリュー出なければ長時間働くべし」と思うだろう。 でも今は、そういう自分の価値観を他者に押し付ける「幼さ」から脱皮できて、とても良かったと思う。 自分と同じ成長曲...
...経営方針
今年は激動の年だった。そのうちの一つが、NPO法人でやってきた事業のほとんどを、昨年作った株式会社に移管したことだった。今後弊社(キズキ・グループと呼んでいる)は、きちんと利益の出る事業を株式会社で行い、利益は出ないが社会変革に必要な事業をNPO法人で行っていく。 その体制変更に伴い、弊社が今後どのような道を目指していくのかを文書にまとめ社内に告知することが、年末の大きな仕事の一つだった。 完成したものを、備忘録的に僕のブログにも転載しておこうと思う。 ******** キズキは「何度でもやり直せる社会をつくる」ことをミッションとしていて、このミッションを一刻も早く達成したいと考え...
...基本的に社会は断絶している
僕は知らない社会のことを、知ったかぶって書くのは好きではないけれども、今回の大統領選でよく言われていたヒラリー支持層とトランプ支持層の「社会の断絶」について少し思うことがあった。 多くの日本人がアメリカ社会の断絶について驚いていたが、別にこれはアメリカに限った話ではないと僕は思っている。日本、そしてどの国でも、社会は基本的に断絶している。 日本で言えば、士農工商の時代では身分によって見えてる世界は確実に違っただろうし、明治以降になっても地域によって方言もかなり異なったからお互いの世界は違っただろう。 戦後一時的に日本は「一億総中流」という時代を迎えるけれども、その時代だって山谷に日...
...なぜ体罰がいけないのか
戸塚ヨットスクールが未だに支持されてしまう一つの理由は、「体罰のおかげで変われた」という人が、世の中に一定数いるからだ。 人間は往々にして、「自分の経験」を他者にも押し付けようとする。 「自分が体罰によって更生できたのだから、他の人も体罰があれば更生できるのだろう」と。 自分の経験が他者に全て適用できるのであれば「統計学」がこれほど流行ることはないはずなのに、なぜか「教育」分野になると「自分の経験」を一般化して語りたがる人が急増してしまう。 (日本の教育に欠けているものは、「自分の経験」ではなく「統計的エビデンス」に基づく教育実践だと、僕はいつも思う) ****** それに、もし体罰にたとえ多...
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