組織が拡大する中で苦しんだことの一つが、「異なる価値観をどのように受け入れるか」ということだった。
例えば、商売は得意だけれども、きちんと納期通りに仕事ができない人がいたとする。一方で納期通りにきちっと仕事はするが、商売には向いていない人がいたとする。
その二人に対する評価は、おそらく「それぞれ」だ。
営業でキャリアを積んだ人は前者の人を評価するだろうし、バックオフィスでキャリアを積んだ人は後者を評価するかもしれない。(若干極端な例だけれども)
例えば、仲良く家族的な雰囲気で働くことが得意な人もいれば、ドライに仕事は仕事だと割り切って働く人もいる。
前者のような態度を良しとする職場もあれば、後者のような態度を良しとする職場もある。
本当は、単に「適材適所ではない」「自分と考えが合わない」だけかもしれない。
けれども人は往々にして「あいつは仕事ができない」と自分の物差しで他人を測り、その価値観の差から派閥争いが生まれる。
僕自身、商社時代全く使えない新人だったが、起業したら意外と上手くいった。
つまり、仕事の質を測る絶対的な価値など存在しないのだ。仕事による、会社による、としか言いようがない。
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20代前半の頃に様々な国で過ごしたことで、人の正義は本当にそれぞれであることを知った。
人の価値観は多様であり、その多様さを受け入れられない時に、対立が起きる。
それは日本の会社だけでなく、民族や宗教間でも同じだ。
だから、僕は「人の正義はそれぞれであること」「それらの正義を包摂すること」を大事にしたいと思う。
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つまり、人は自分の物差しで相手を測る。
そのことに自覚的でなければならない。
でも一方で、残念ながら、組織には共有できる価値観が必要なこともある。
違いすぎる価値観の人と一緒に心地よく働くことは、なかなか難しいからだ。
そこで、組織が大きくなるにつれて「行動規範」が重要になってくる。
自社の大事にしている価値観は何なのか。
それを明確に打ち出さないと、自社に合う人材は入ってこないし、一方で自社に合わない人材が入ってくる可能性もある。
本当は、すべての人を包摂できる組織でありたいけれども、それは難しい。
(すべての人を包摂できる組織だったら、採用面接はいらなくなる)
そんなことを考えながら、改めて自社のビジョン・ミッション・行動規範を読み直している。