東京地裁に行ってきた。
韓国人の不法滞在事件と、強盗殺人事件、麻薬所持、の三つの裁判を傍聴した。
中でも、強盗殺人事件が興味深かった。
強盗に入った犯人が、留守宅だと思って侵入した家には家族三人がまだいたため、慌てた彼は三人を刺して縛り、電話線を抜いた後、逃走したという事件だった。
結果、一人が死亡、二人が重傷、となった。
そして、殺す意図まではなかったのか、それとも殺す意図まであったのか、というのが検察側と弁護側の争点だった。
(おそらく刑法上は、前者が殺人罪、後者が傷害致死罪になるのだと思う)
検察のプレゼンテーションはうまかった。
きれいなパワーポイントにあわせて、完璧に練り上げられた原稿を流暢に読み上げる。
ただし、よく聞いていると論理のつめが甘い。なかでも「被害者を縛り電話線を抜いたのは、殺人の意図があったからだ」とする点だった。
外部者の発見を遅らせるために、確実に逃走するために、被害者を縛ったという方が論理的だろう。
一方で弁護側のプレゼンテーションはひどかった。
詰まりながら、なんとか主張を読み上げているのだが、緊張のあまり声が震えているのだ・・・
主張は論理的だが、当然ながら説得力はなかった。
裁判員制度が始まるらしいが、これからはプレゼンテーションのうまさが判決を左右することになるのだろう。
東大の本田由紀准教授が「ハイパーメリトクラシー」という言葉を使って、ポストモダン社会では単純な「学力」から「想像力」「コミュニケーション力」が重要となってくる、と述べていたのを思い出した。これから検察官や弁護士に求められる能力も変わってくる。
僕は「市民」一般を、それほど賢くて論理的だとは思っていないので、こういった司法の状況をあまり喜べない。
2008年12月4日
ある弁護士の話。「まぁ、本当にやってたら(有罪)裁判員制度で裁かれたいよね。万が一にも無罪を勝ち取れるかも知れないから。ただ、マジで濡れ衣なら現在の司法制度の方で裁かれたいと思う」。しかしさ、一審で国民の司法参加と言っても、控訴、上告すれば既存の司法システムで裁かれるわけですよ。先日、高裁・最高裁は裁判員による1審判決を尊重して控訴、上告事案を審理するとか言ってたけど、結局形だけの国民参加だよね。それよりも、最近興味有るのは検察審査会制度の改正法の施行(裁判員制度と同時スタート)と、今月1日から始まった被害者参加制度かな。>ただし、よく聞いていると論理のつめが甘い。なかでも「被害者を縛り電話線を抜いたのは、殺人の意図があったからだ」とする点だった。外部者の発見を遅らせるために、確実に逃走するために、被害者を縛ったという方が論理的だろう。 ここの部分だけど、見に行った裁判は初公判?検察官の部分が冒頭陳述なら詳しいことは言わないのが基本。争点を立証するためのポイントのみを説明するから、そういった簡単な説明だけで済ますのが普通だよね。2回目以降の審理で「外部者の発見を遅らせるために、確実に逃走するために、被害者を縛った」ということを、もっと詳しい状況証拠や証言、被告人尋問を通してちゃんと細かく主張するはず。さすがに東京地検の公判検事ならそんな杜撰な主張はしないはずだから、時間があったら第2回後半以降も傍聴に行ってみな~。
2008年12月4日
あ、おれね。Shuhei。
2008年12月4日
あ、ちなみにちょっとだけ指摘だけど、傷害致死罪か殺人罪かというより、もともとは強盗殺人を争っているので、刑法上では「強盗致死」になるかが焦点だね
2008年12月5日
「ハイパーメリトクラシー」って、齋藤純一がいうところの「言説の資源」なのかなぁ。本田由紀さんの本はちゃんと読んだことがないけど、もしお時間あれば齋藤純一「公共性」「自由」あたりはいかがでしょう。
2008年12月10日
>周平さすが、新聞記者。勉強になります。次回が判決だったから、初公判ではなかったよ。俺もちゃんとメモしていたわけではないので、一緒にいった友人たちに確認してみるわ。>名前なしさん斉藤純一は本棚に眠っている本の1つです。3年ぐらい前に買ったのですが・・・ちゃんと読んでみます!