米系投資銀行の崩壊に関して、考えたこと

ちょっと前まで就活生であり米系投資銀行で働くことに一時期憧れていた僕にとって、昨今の米系投資銀行の崩壊はショックだった。
日本で最も優秀だとされている学生たちや、世界の名だたる大学でMBAを取得した若者たちのみが働くことを許されるそれらの組織が、邦銀や日系証券に飲み込まれていくのは、とても不思議だ。
「邦銀とか日系証券とかありえないよね~」と話していた一部のインベストバンカーたちは、今の状況をどんな風に感じているのかなと思う。(まぁ彼らは頭がいいので、再就職先には困らないだろうけれども)
 
 
こういった状況を見ていて、どんなに優秀な人々であっても社会構造=システムに抗うことはできないのではないかと考えている。
「一流企業→MBA→トップティアの米系投資銀行」とエリートコースを歩んできた人も、それは高度経済成長期に「一流大学→一流企業→目指せ社長」という思考回路で働いてきた人と、なんら変わりがないのではないか。あるシステムの中での勝ち負けに、一喜一憂しているだけであり、だからそのシステムが崩壊してしまえば、また振り出しに戻ってしまう。競争は、すべて今ある社会システムを前提としたものだから。
 
一方で、「社会起業」という言葉の流行や、姜尚中の「悩む力」が45万部も売れていることから考えると、今、「意味の時代」へと移り変わっている気がする。キャリアという名の勝ち負け競争ではなく、何に「意味を見出すか」を問う時代へと。
 
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友人が、新聞記事の中で僕のブログを取り上げてくれた。
世界の複雑性に言及するメディアがもっと増えればいいのになと思う。

10 Comments

  1. Akihiro
    2008年10月8日

    ぼくなどは社会起業という言葉には若干の軽さと違和感を感じていて,NPO専従職員になる事を希望する若い人が多かったり,一時期言われたボランティア・ブームにも似て,結局はメディアに取り上げられたいくつかの理想論的なケースという選択肢の中から職業を選ぶという,ある意味消費行動に近いような職業選択である様な気がしていていまひとつしっくりこないんだけど,そんな過剰な意味付けをしなければいられないというのでは,いずれ疲れ果てて力尽きてしまうのじゃないか,って懸念があるんですよ.これが杞憂に終わるのならいいのだけれど.例えばニートや外こもりなどをしている様な人たちの中には,こうした“まるで消費行動と区別がつかないかの様な”仕事選びにも,素晴らしい事のように言われているボランティアや社会起業にも何か嘘くささを感じている人も多いんじゃないかな.ゆうすけさんが言うような優秀な学生たちやそこから無事にバンカーなどへと職を得て行った人たちについても同様に,ある意味職業を“ひとつの属性を身につける”こととしか捉えていない様な人も多い気もします.それについては行動経済成長期の日本で一流大学→大企業とエリートコースを進むのと同じで,その時々の社会制度に完全に依存しているという事になるという意味では国内の大企業に勤める人たちも外資系の一流企業に勤める人たちについても全く同じですね.ぼくや,こうした現在の経済・社会制度に対して批判的な友人などは,こうした“社会のシステムそのものから降りる”という事を考えています.勿論,それで何不自由のない暮らしが出来ればそれでいいのだけどねwただ,社会システムから(もちろん完全にとは行かないので“出来るだけ”,だけども)降りてしまうことで,精神的な自由度が担保される分,ある意味人生は豊かだとも言えると思います.ひとさまからは負け惜しみと言われそうだけど(笑

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  2. yusuke
    2008年10月8日

    >そんな過剰な意味付けをしなければいられないというのでは,いずれ疲れ果てて力尽きてしまうのじゃないか,って懸念があるんですよ.
     
    なるほど。それは納得です。
    僕のように過剰な意味付けによって生きる人間もいれば、そのような意味づけにつかれてしまう人間もいる、ということですね。
     
    >ぼくや,こうした現在の経済・社会制度に対して批判的な友人などは,こうした“社会のシステムそのものから降りる”という事を考えています.勿論,それで何不自由のない暮らしが出来ればそれでいいのだけどねwただ,社会システムから(もちろん完全にとは行かないので“出来るだけ”,だけども)降りてしまうことで,精神的な自由度が担保される分,ある意味人生は豊かだとも言えると思います.
     
    社会システムから本当に降りることのできる人間たちこそが、強い人なのだと思います。フロムがいうように、人間は自由なんて求めていないから。システムの中で生きることこそが、最も楽な生き方だからです。「社会システムから降りる」という選択は、「意味」によって生きているからこそ、起こりうるものだと思います。
     
    そして、そういった社会システムから降りた人々も「幸せ」に生きられる社会こそが理想だと思うのです。
    競争したい奴はすればいい。でもしたくない奴も幸せになれる社会を創るべきだと思っています。

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  3. Unknown
    2008年10月8日

     
     
    秋の気配のする長野の山の中から出てきたら、総理大臣がかわってて大手の証券会社が潰れてたんだ。
     
    だけど、僕はユウスケ君とは違ってそういったことになんの感銘も受けないで、ただ俯瞰してるだけだよ。
     
    そういったことは畑を耕してる僕にとってあまりにも実体がなさすぎるからね。
     
     
    アメリカの証券会社で働くことに優位性を感じる若い人がいるっていうのは残念なことだな。
     
    その価値観っていうのは、自分で決めたものだとは思えないから。
     
    証券会社で働くことが人に蔑まれることだったとしてもその人達はそこで働きたがるのかな?
     
    ユウスケ君のいう”優秀な人々”っていうのは、たんに企業とか国家にとって”優秀”ってことで、人を形成する一つのパーツでしかないもんね。
     
    国家が国益を上げようとしたり、企業が利益を求めたりするのは当然のことだと思うけど、そんな革張りのソファーに座って自分の欲を追ってる誰かが叩いてる手拍子じゃ踊る気がしないな。
     
    市場の無限性っていう夢からとっくに僕達は覚めたんじゃないのかな?
     
    僕達は地球っていう星の中で自給自足してるんだよね?
     
    カフスボタンをした誰かが必要以上に金を持つってことは、そのぶん他の裸足の誰かが失うってことでしょ。
     
     
    ひとにぎりの強い人達が決めた、”強いものが勝つ”っていう理論じゃ、弱い人達はどうすればいいんだろう?
     
    ”もっと儲けてやろう、もっと力を持ってやろう”っていうアメリカン・ドリームから醒めなきゃいけない時期がきてるんじゃないのかな。
     
    何不自由ない暮らしなんてあるはずないと思うけど、このブログを読んでいる頭のいい人達が、一緒にアメリカン・ドリームよりも素敵な夢を描いてくれたらいいのにな。
     
     
     

    返信
  4. Mariko
    2008年10月8日

    「どんなに優秀な人々であっても社会構造=システムに抗うことはできない」
    その通りだと思います。
    都市計画でこれが問題でどうしても何かを良くしたいと思っても、現状の法律で身動きとれなかったり、
    市長や県知事や大臣等の承認がなければすすめられない計画はいくらでもあるし、そういう大きな決定権があるリーダーの為に働くという意味合いが強いですね。 けれど、それが分かったからといってもできる事は沢山あります。
    政治はハンドル、経済はアクセル、宗教はブレーキといったある学者の方がいたけど私はその通りだと思います。
    アクセルだからインフレも起こるし、コントロールしないとあがるところまであがるし、逆にデフレも起こりうる。。
    メデイアの発展、私も期待しています。

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  5. yusuke
    2008年10月8日

    >無名さんへ
     

    >秋の気配のする長野の山の中から出てきたら、総理大臣がかわってて大手の証券会社が潰れてたんだ。 だけど、僕はユウスケ君とは違ってそういったことになんの感銘も受けないで、ただ俯瞰してるだけだよ。そういったことは畑を耕してる僕にとってあまりにも実体がなさすぎるからね。
     
    実態がないとしても、それでも僕らはこの影響を確実に受けていことは忘れたくないです。
    たとえば、投資→米の価格高騰→貧困、といったように、世界のある事象は人々の生活に無関係ではないわけです。だから、僕にはいつまでも関心があります。
     
    >アメリカの証券会社で働くことに優位性を感じる若い人がいるっていうのは残念なことだな。その価値観っていうのは、自分で決めたものだとは思えないから。証券会社で働くことが人に蔑まれることだったとしてもその人達はそこで働きたがるのかな?ユウスケ君のいう”優秀な人々”っていうのは、たんに企業とか国家にとって”優秀”ってことで、人を形成する一つのパーツでしかないもんね。
     
    おっしゃるとおりで、それは自分で選んだ価値観ではありません。ただ、多くの人は小学校や中学校に行きます。高校にも行く人が多いです。頭のいい高校を出た人は大学にも行きます。人は多かれ少なかれ、そういった社会のシステムを受け容れながら生きていくもの。ちなみに僕は中学中退していたりするので、そういった社会システムに適合できなかった人間です。大学に行ったのも遅かった。それでも結局は社会のシステムに適合することを臨みました。そのほうが楽ですから。
    自分の人生を「自分の思うように」描いていこうとする人は、よほど強い人です。しかし「自分の思うように」と思っていたところで、人の思考は結局社会の構造から影響を受けています。「自分の思考」なんてものは厳密に存在しないわけです。皆、ある価値観のレールにのっているのです。
    ちなみに、僕は「優秀」という言葉の意味を、「あえて」使っています。
     
     
    >国家が国益を上げようとしたり、企業が利益を求めたりするのは当然のことだと思うけど、そんな革張りのソファーに座って自分の欲を追ってる誰かが叩いてる手拍子じゃ踊る気がしないな。市場の無限性っていう夢からとっくに僕達は覚めたんじゃないのかな?僕達は地球っていう星の中で自給自足してるんだよね?
     
    僕自身は、会社の利益にも国益にも関心はありません。ただ、多くの人は違うでしょう。
    別にお金持ちになりたい人は、なればいいと思います。人の思想は「自由」ですから。誰にも侵害する権利はない。
    他者に迷惑をかけない限り。
     
    >カフスボタンをした誰かが必要以上に金を持つってことは、そのぶん他の裸足の誰かが失うってことでしょ。 ひとにぎりの強い人達が決めた、”強いものが勝つ”っていう理論じゃ、弱い人達はどうすればいいんだろう?
     
    経済はそんなに単純にできていないと思います。ただ一方でそれは真実でもあると思います。
    日本の近年の格差問題は、途上国の台頭が主要要因ですから。今まで日本人が享受してきた経済的反映は、途上国の犠牲の上に成り立ってきたといえる部分もある。
    ただ一方で、格差問題などを考えるとき、「強くなりたいものはなればいい。でも弱いままでいいと思う人間も幸せになれる社会」を作るべきだと思います。
     
    >”もっと儲けてやろう、もっと力を持ってやろう”っていうアメリカン・ドリームから醒めなきゃいけない時期がきてるんじゃないのかな。何不自由ない暮らしなんてあるはずないと思うけど、このブログを読んでいる頭のいい人達が、一緒にアメリカン・ドリームよりも素敵な夢を描いてくれたらいいのにな。
     
    だから僕は、これから「意味の時代」が訪れるといいなと思っています。
    1つの価値に縛られない時代こそが、ポストモダンの社会だと思っています。

    返信
  6. yusuke
    2008年10月8日

    >まりこ
    そうだね。
    ただ政策レベルにおいては、それが為政者の問題であり、問題の所在が見えやすい。
    けれども、投資銀行の崩壊を見ていると、小さな人間なんかが抗えない世界の構造みたいなものに、畏怖してしまうのです。
    今後政治という「ハンドル」がどのように経済をコントロールしていくのか、興味深いです。

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  7. Mariko
    2008年10月9日

    そうですね。
    投資銀行神話みたいなものがありましたからね。。。
    私も経済をどうコントロールしていくか楽しみです。
    私がmixiにのせたODAについての記事についてもコメントもらえたら嬉しいです。
     
    歳を重ねるということは、それだけメンテナンスが必要になるんですよね。
    食事・運動・精神的、なものを意識して、自分に合う健康の保ち方見つけられるといいですね!
    あたしも2・3年前は不健康でしたが(苦笑)今は健康なはずです(笑)

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  8. Mariko
    2008年10月10日

    あ、あと睡眠ですね。
    最近はあたしも平均6時間ぐらいです(笑)
    お大事に~!

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  9. Shunsuke
    2008年10月10日

    意味の時代か。「経済不況→意味の時代」ってのはナチスドイツの出現も同じ図式だよね。ナショナリズムとか民族性とか伝統とか、そういうような意味を見出す動きも強くなってくるんだろうね。

    返信
  10. yusuke
    2008年10月10日

    >SHUN
    ああ、広い枠組みで見れば、そうも言えるかもね。
    ただ、ここでの文脈は社会学では言い古されたとおり、価値が多元化して一人一人が自らの意味を掴み取る時代へと変容していくといいなぁという意味っす。

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