グローバリゼーションを「操縦」する

グローバリゼーションに抗するために、「国境を超えた市民の連帯」は謳われた時期があったが、その運動が実際に大きな力を持つには至らなかった。理念的に「正しい」行動であっても、それが実際に効果を上げるかは別問題なのだ。 (某学者の言葉を借りれば、「表出」と「表現」は異なるということだ。)    グローバリゼーションに関して言えば、「抗する」のではなく「操縦する」という視点が必要だと、私は考えている。 つまり、今すでにある枠組みを壊すのではなく、その枠組みの中でできるだけ良い方向へと、舵をずらすような方法を探すことが重要なのだ。     だから、私は先進国と途上国を新しい角度から「つなぐ」ことで、山積...

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オニック

ここ一年以上作り続けているドキュメンタリーの主人公の一人は、オニックというダッカの娼館のスタッフだ。 彼はバングラデシュで高校を卒業後、マレーシア、インドネシア、シンガポール、タイと、海外で出稼ぎを行い、そこで貯めたお金でバングラデシュに自分の店を持った。けれども、一年と経たないうちに、その店は強盗に破壊されてしまった。   「職がない」 バングラデシュにいると、あちらこちらで聞かれる話だが、彼も状況は同じだった。 自分の店を失った彼は娼館のスタッフになった。   初めて会ったのは、去年の秋、僕が二回目にバングラデシュを訪れたときだ。 僕がその年の春に滞在した娼館を訪ねると、彼は新しいスタッフ...

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