イスラム冒涜について

巷で話題となっている、ムハンマドの風刺画事件について。
今度まとまって意見を書こうと思っているが、少々思うことがいくつか。
 
 
 
「イスラエルは地図上から消し去るべきだ」と公然と発言する大統領を持つ国民が、宗教の冒涜について西欧諸国に対して暴力的な手段をもって抗議する。
イスラエルの存在を認めたくないというイランの大統領の発言も、イスラエルと中東との関係を見れば分かるが、それなら「イスラム原理主義によるテロの拡散を見ればデンマーク人の気持ちも分かる」なる反論もなりたつ。
更に言えばサウジアラビアの国教のワッハーブ派なんて、「スンニ派以外の人間は死んでも良い」みたいなことを教義としているわけで、他人のことを批判する前にまずイスラム教の内部を見直せよと言わざるをえないのではないかと思う(まぁイランの場合はシーアなので、ワッハーブが「内部」とは言えないか)。他宗教を尊重していないのは、どっちなんだと。
 
 
 
目を転じて、ヨーロッパに対して思うこと。
デンマークの新聞に半年前に掲載された風刺画を、改めて再掲載したのはキリスト教系の新聞だったらしい。じゃあイスラム系の新聞がキリストやらマリアやらを冒涜しても、彼らが何の抗議もしないならそれも良いがそうではないだろう。
さらに言えば、「表現の自由」はミル以来のリバタリアンたちにとって特に重要な概念ではあるが、これはあくまで西欧の概念である。イスラム社会に適用することが正しいとは言いがたい。
 
 
 
さて私個人としては、「宗教は冒涜してはならない」なるテーゼに納得がいってない。
少なくとも、根拠のないものも含まれた新興宗教批判が度々吹き荒れる社会に生きている私たちにそんなキレイごとを言う資格はないはずだと思うのだ。
 

4 Comments

  1. Naomi
    2006年2月9日

    一面だけ見てちゃダメ、自分が今立ってる場所を確認して周りの人の立場も見て発言しなきゃね。どうして世の中に正論は吹き荒れないんだろう。『正論』なら吹き荒れてるのにね。おやすみ。

    返信
  2. Shunsuke
    2006年2月10日

    新興宗教だけでなく、宗教は全て根拠のないものを前提としているからこそ、お互いの宗教を冒涜しないで共生していこうという約束事があるのかな、と思ったりします。

    返信
  3. Nassy
    2006年2月10日

    たぶん上記のようなキミの正当な「批判」も、熱心な宗教家からは「冒涜」と見なされるかもしれない。
    って考えたら暗い気持ちになった21歳の夜。

    返信
  4. yusuke
    2006年2月13日

    >はまっち
    宗教学専攻としてはどうなのかね?
    >しゅん
    宗教を信じている人間たちにとっては、宗教は根拠あるものなのでは?
    イスラム教徒たちと接していると、そう思います。
    >ナッシー
    そうでしょうね。
    この二年間の約3ヶ月はイスラエル・パレスチナにいるか、彼らと共同生活していたわけですが、やはり宗教は難しいなと思います。

    返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です